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【 レポート 】「視覚障害者・健常者 逆転インタビュー」体験レポート



2020年7月末、一般社団法人PLAYERS主催の「視覚障害者・健常者 逆転インタビュー ONLINE WORKSHOP」に参加させていただきました。いったいどんなワークショップなのでしょうか?体験レポートをお届けしたいと思います。



PLAYERSとは?


一般社団法人PLAYERSとは、「一緒になってワクワクし 世の中の問題に立ち向かう」をスローガンとした、多様なプロフェッショナルからなるプロボノチーム。本業はデザイナー、エンジニア、コピーライター、広報、弁護士などさまざま。メンバーには障害のある方もいて、それぞれの専門性を活かしながら活動しています。今回の逆転インタビューは、視覚に障害のあるメンバーが進めているプロジェクトだそうです。



なぜ“逆転”インタビュー?


今回のオンラインワークショップは、「視覚障害のない」参加者が、「視覚障害のある」参加者からインタビューされるという“逆転”インタビュー。なぜ、“逆転“なのでしょうか?

これまでにPLAYERSは、JR東日本との mimamo by &HAND プロジェクトや、テクノロジーで点字ブロックをアップデートする VIBLO by &HAND といった、視覚障害者向けのサービスやプロダクトの開発に取り組んできたそうです。そして、そのリサーチのなかで視覚障害のある人にインタビューする際に「困っていることは何ですか?」と質問しがちでした。

そこで、「視覚障害のある」人がインタビュアーになり、「視覚障害のない」人に質問するという、これまでの立場を“逆転”させたワークショップを行うことで、これまでにない発見や新しい関係を築くきっかけにつながるのではないかと考え、今回のワークショップが企画されたそうです。視覚障害のある当事者がメンバーにいるPLAYERSならではの“逆転”の発想ですね!


「オンラインワークショップ」スタート!


ワークショップの参加者は、視覚障害のない人7名、視覚障害のある人3名の合計10名でした。最初に、ファシリテーターをつとめる中川テルヒロさんの自己紹介とワークショップの趣旨説明がありました。中川さんは、PLAYERSのメンバーであり、視覚障害のある当事者。本業では、ソフトウェア開発やユニバーサルマナー検定の講師をされているそうです。

次に、視覚障害のない参加者7名が自己紹介を行いました。参加者は、高校生や大学院生、グラフィックデザイナー、眼科医など、年齢も職業もさまざま。高校3年生の女性は、「学校生活では視覚障害のある人との接点がなく、ワークショップなどに参加しないとお話する機会がないため」参加したそうです。眼科医の男性は、「視覚障害のある人とは、患者と医師という立場の関わりしかなかったので、もう少し深い関わりができる機会になれば」とおっしゃっていました。



ワークショップのプログラム
● 視覚障害のある人の座談会
● 視覚障害のある人から視覚障害のない人へインタビュー(メンバーを入替え3回)
● ふりかえり
 



視覚障害のある人の座談会


自己紹介の後、「視覚障害のある人の座談会」がはじまりました。中川さんの進行のもと、まずは視覚障害のある参加者が自己紹介をしました。そして、“逆転”ワークショップが企画されるきっかけとなった、「困っていることは何ですか?」という質問に関する話題へ。お二人とも、学校の福祉授業にゲストとして招かれることがあるため、そういった場面では、聞かれることが多いそうです。さらに中川さんから、「『困っていることは何ですか?』と質問されることについてどう感じますか?」という問いかけがありました。お二人は、それぞれどのように感じているのでしょうか?

中途失明の女性は、「困っていることは何ですか?」という質問自体は、小学校や中学校の福祉授業で何度も聞かれるので、慣れてしまっているとのことでした。ただ、小学生の時にかかった病気により視力が急激に低下し、その後も徐々に視力が低下したため、見え方が変わった時や全く見えなくなった時には、「もうこれ以上聞かないで」と思ったことがあったそうです。また、相手がどういう気持ちでその質問をしているのか、質問者の声のトーンで判断することもあるとのこと。年齢や経験を重ねられた今だからこそ、当時のご自身のことを客観的にふりかえられている印象でした。

もうお一人の参加者である全盲の男性も、福祉教室でよく聞かれるそうです。福祉教室では困っていることは何ですか?」という質問に限らず、子どもたちには何でも自由に聞いてほしいそうなのですが・・・。学校の先生の方が気を遣われ、子どもたちから事前に質問を提出させ、“失礼にならない”質問を選ばれることもあるそうです。もちろん、一般の視覚障害のある人にむやみやたらに聞くことは失礼になる場合もありますが、大人によって選ばれた質問はつまらないことも多いそう。福祉教室には“聞かれる”ために行っているので、子どもの好奇心のままにどんどん聞いてほしいとのことでした。

中途失明の女性のように、年齢や精神状態、質問者との関係などにより、たとえ同じ質問であっても、捉え方が変わってしまうということは、障害のある人だけではなく、誰にでも起こりうることだと思いました。特に、就職、結婚、妊娠、病気、介護などライフステージに関する質問の場合、年齢や相手との関係性などによって、同じ質問でもネガティブに捉えてしまうということはあるかもしれません。質問はあくまでもコミュニケーションの“手段”なので、相手の気持ちを想像することが大切なのだと、あらためて考えさせられました。その一方で、相手の気持ちを想像することはもちろん大切ですが、自由に質問しても受けとめてくれる場があることで、お互いの視座や距離感が変化し、これまでにない発見や新しい関係を築くきっかけになるのではないかと感じました。まさに、今回の“逆転”インタビューの本質に迫るような、お二人のお話でした。



街なかで視覚障害者に声かけをしたことはありますか?


ここまで視覚障害のない参加者はマイクをミュートにしてお話を聞いていたのですが、中川さんから「街なかで視覚障害者に声かけをしたことはありますか?」との質問がありました。そして、突然Zoom の投票機能があらわれ、「はい」「いいえ」を選択する画面が出てきます。参加者全員で質問を共有することで、「インタビューされる」イメージを膨らませました。この後のインタビューでは、いったいどんなことを聞かれるのでしょうか?




インタビューではどんなことを聞かれるの?


いよいよ、ブレイクアウトルームでグループに分かれてインタビューです。視覚障害のある人1名に対して、視覚障害のない人2〜3名の3グループに分かれ、メンバーをシャッフルして、合計3回行われました。

最初のグループでは、「視覚障害のある人に声をかけたことはありますか?」「点字ブロックに違いがあるのを知っていますか?」「うろたえている視覚障害のある人を見かけたら、声をかけることはできますか?」「どうしたら視覚障害のある人に声をかけやすいですか?」といった質問が。たとえ点字ブロックがあっても、方向がわからなくなることがあり、怖い思いをされることがあるそうです。最後は、そうした「困っている障害のある人に対して、どうしたらすぐに気がつくことができるのか?」という内容について、みんなで対話をおこないました。

次のグループでは、「視覚障害のある人に声かけをしたら断られそうと感じたことはありますか?」「今の気分は緊張感や不安とワクワク感の割合はどれくらいですか?」「自分に視覚障害があり目の病気が遺伝するかもしれない場合、あなたは何を感じて何を考えますか?」「視覚障害のある人からされたくない質問は、どんな質問ですか?」といった質問がありました。今回のワークショップの本質に迫る質問で、座談会でお二人が話されていたことにもつながる内容でした。

最後のグループでは、「街を歩いていて、視覚障害者に気づいたことはありますか?」「もしも今見えなくなったら、仕事や学校はそのまま続けられますか?」という質問だけではなく、「みなさんから聞きたいことはありますか?」という問いかけがありました。そこで視覚障害のない参加者からも、「視覚障害のある人の仕事の幅はどのくらいあるのでしょうか?」「点字とスマートフォンの読み上げ機能は、どちらを使うことが多いですか?」といった質問がでました。最後は双方向でインタビューをし合い、お互いに聞き合うような展開になりました。




ふりかえり


最後に、参加者全員でふりかえりを行いました。その一部をご紹介したいと思います。


視覚障害のある人

  • インタビューは簡単にできるかなと思っていたけれど、緊張しました。予想をしながら質問をしたのですが、想定外の答えが返ってきたことに戸惑うこともありました。普段使われていない細胞をたくさん使い貴重な体験をすることができてよかったです。

  • 参加したことで違う自分がみられて面白かったです。あらためて自分から行動を起こしていかなければいけないと思いました。

  • 視覚障害のある人にも固定概念があるのかもしれないと思いました。

  • 「もしも今見えなくなったら、仕事や学校はそのまま続けられますか?」という質問に対して、見える人から「見えない人の立場だからこそ考えられることを、考えるかもしれない」という答えがあり、そういった視点は新しい発見でした。

視覚障害のない人

  • 質問を受けることで、今まで自分はこういうふうに視覚障害のある人に対して質問をしてきたんだということが、明確になりました。こういった機会は意味があると思いますし、さらにここから先、お互いに対話をしていきたいと思いました。

  • 言葉にはできない大事なことがちょっとわかった気がします。

  • 質問されたことに対して健常者の視点で話してしまっていて、同じ立場で話したいと思っても、自分自身が“壁”を作ってしまっているのではないかと気づかされました。そしてその原因は、視覚障害のある人の生活や現状を“知らない”からだと思いました。

  • 外国人とコミュニケーションをとろうとしていなかったのと同じように、視覚障害のある人ともコミュニケーションをとる努力をしていなかったのだなと思いました。声をかけてほしいタイミングの話などが聞けたので、これからはもっと関わっていきたいと思いました。

  • 質問によって、今まで考えなかったことを考えるきっかけになりました。

最後に


オンラインワークショップは自宅など好きな場所から参加できるので、視覚障害のある人も視覚障害のない人も気軽に参加することで、お互いのことを“知る”きっかけになれば素敵だなと思いました。インタビューを通して、他の参加者の多様な考えを知ることができ、また自分自身の考えを意識的に言語化することで、新しい気づきがたくさんありました。ワークショップでご一緒した皆さま、楽しい時間をどうもありがとうございました。


文 ゆみこ

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